皆さんは、『おまとめローン』という言葉をご存知でしょうか?
1990年代にバブル経済の崩壊によって、アコムやアイフルなどの消費者金融が急速に成長を遂げました。
更に、日本長期信用銀行などの大手金融機関が債務超過によって破綻してしまいます。
それに伴い、銀行が不良債権処理を加速させ、貸し渋り・貸し剥がしなどの顧客からの融資引き揚げを行っていきます。
すると、債務者は行き場を失い、複数の金融機関や闇金融を相手に自転車操業的に借金を重ねるようになります。
結果として、2000年代には社会問題になるまでに、多重債務者が急激に増加します。
一方で、1990年代後半から2000年代にかけての金融ビッグバンと呼ばれる銀行業への規制緩和政策により、銀行の営業形態を多様にする可能性が生まれました。
同時に、大手行同士の合併も相次ぎ、中堅規模の銀行や後発の銀行は取扱商品に特色を出すことによって生き残りを目指すことを迫られてしまいます。
そうした状況で、2000年代後半からいくつかの銀行が取り扱うようになったのが『おまとめローン』です。
複数の金融機関に対してローンや借金がある債務者に対して、総額を一括返済するのに相当する額を融資してくれる、といったものです。
そうすることで、長期的に自行の顧客になってもらうことを狙ったのです。
おまとめローンと債務整理の違いとは?
もしかすると
『おまとめローンと債務整理って同じなんじゃないの?』
と思う方もいるかもしれません。
おまとめローンと債務整理の違いは以下の通りです。
おまとめローン | 債務整理 | |
関係する法律 | 貸金業法施行規則 (総量規制の例外) |
民事再生法・破産法・債権法・利息制限法など |
手続き | 個人で普通に手続き可能 | 専門家の助けが可能 |
信用情報への登録 | 事故情報とはならない | 事故情報が登録される (債務整理方法や信用情報機関によって異なる) |
支払利息 | 多少の軽減効果が期待できる | 大幅な減額が可能なことも |
過払い金 | 戻らない (別途返還請求が必要) |
戻る可能性あり |
新規借入 | 申込みは可能 | 5年~最大10年は新規借入不可の可能性が大きい |
おまとめローンと債務整理、一見すると似ているように見えますが、本質は大きく異なっています。
特に、おまとめローンで債務を処理すると、信用情報に金融事故情報として登録されない点は大きいですね。
また、債務整理をすると5年~10年は新規で借入れをすることができなくなりますが、おまとめローンであれば新規の借入れも可能となります。
逆に、債務整理であれば大きな債務の減額が期待できますが、おまとめローンではそこまで大きな減額は期待できないとされています。
また、過払い金に関しても、おまとめローンであれば戻ってきませんが、債務整理であれば戻ってくる可能性があります。
おまとめローンのメリット・デメリット
おまとめローンのメリットとは?
返済期日が1回に減らせる
まず、複数あるローンを1つにまとめると、返済期日が1回になるというメリットがあります。
月に何度も返済日がある状態では、常に借金に追われているという感覚になります。
借金が1つになることで、精神的にも楽になり、借金の管理も簡単になります。
毎月の返済額を少なくできる場合がある
カードローンやおまとめローンでは、借入残高が多くなるほど、借入残高に対する返済額の割合が少なくなります。
たとえば、借入残高が10万円の場合の返済額が4,000円、100万円なら3万円が返済額だとします。
この場合、10万円の残高に対する返済額は4%、100万円の残高に対する返済額は3%です。
複数あるローンを1つにまとめれば、残高合計に対する返済額の割合を減らせるので、結果として、毎月の返済額を少なくすることも可能になります。
ローンの金利が低金利になる場合がある
一般的なおまとめローンは、消費者金融や銀行カードローンの金利よりも低金利です。
金利が低くなれば、当然に借金全体の負担を減らせます。
借金がなかなか減らない…と感じているなら、その原因は、カードローンの金利です。
カードローンの金利が低くなれば、毎月の返済額も少なくなり、ローン完済までを早くできます。
おまとめローンのデメリットとは?
約定返済額が少ない場合がある
おまとめローンの種類にもよりますが、極端に返済額が少ないサービスもあります。
返済額が少なければ、返済が楽になるのは確かですが、返済期間が長くなるのも事実です。
極端に返済額が少ないおまとめローンを利用すると、完済までに10年以上かかることもありますので、必ず返済シミュレーションで計画を考えてから申込むことが重要です。
過払い金が発生している場合に返還請求できなくなる
おまとめローンをする前に過払い金が発生していると、過払い金の返還請求ができなくなることがあります。
10年以上前から消費者金融を利用している場合は、過払い金の有無を確認してから、おまとめを検討するようにしましょう。
おまとめ後の債務整理に影響する場合がある
債務整理の手続きには、自己破産、任意整理などがありますが、おまとめをした直後に任意整理をしようとしても、金融機関と和解できなくなる可能性があります。
任意整理は、基本的には、金利の減免やカットをして減額された借金につき、3年以内に減額された借金を返済することで、残りの借金の返済が免除となる和解です。
少し分りにくいですが、おまとめをした直後に任意整理をしようとしてもできず、自己破産を選ばざるを得ない場合があるということです。
おまとめローンの審査について
おまとめローンと通常のカードローンと比較すると、一般におまとめローンの方が低金利です。
低金利のローンの方が、審査が難しいと考えられていますので、通常のカードローンよりもおまとめローンの方が難易度が高いと考えられます。
しかし、ローンのおまとめをすれば、返済の負担が少なくなり、約束どおりに返済を履行できる可能性が高くなるとも考えられます。
カードローンの申込みでも、審査の難易度の比較を気にする場合がありますが、審査を受けてみなければ分からない、というのが実情ではないでしょうか。
ちなみに、おまとめローンの審査で見られる基準は以下の表の通りとなっています。
項目 | 内容 |
年齢 | 20代~60代であれば問題なし 若すぎ、高齢はマイナス評価 |
年収 | 高いほど高評価 借入額とのバランスも重要 |
勤務先 | 収入の安定性を見られる 公務員・大手企業は高評価 |
雇用形態 | 正社員が有利 アルバイトや契約社員は不利 |
勤続年数(営業年数) | 長いほど有利 1年未満だと審査に落ちやすい |
家族構成 | 本人が返済できない場合に対処できる人の有無 両親などと同居していると高評価 |
固定電話 | 固定電話があると好印象 (審査に大きく影響するわけではない) |
居住形態 | 賃貸より持ち家の方が高評価 |
おまとめローンでは年収以上に借りられる?
貸金業法における総量規制は、融資の上限額を年収の3分の1までにする、というものですが、あくまでも貸金業者を規制するためのものです。
貸金業者は、銀行以外のノンバンク、つまり、消費者金融やクレジットカード会社、信販会社などのことです。
つまり、銀行のおまとめローンの場合は、そもそも総量規制の対象外となりますので、年収の3分の1の基準が問題となることはありません。
消費者金融のおまとめローンについては、例外規定の「顧客に一方的に有利となる借換え」に該当しますので、年収の3分の1を超えるおまとめでも問題なく借入れできます。
おまとめローンを実施しているカードローン会社!
有名な消費者金融のカードローンで、おまとめローンを実施している『アコム』『アイフル』『プロミス』の3社を見ていきましょう。
会社名 | 貸付金額 | 貸付利率 | 資金使途 | 必要書類 | 返済方式 | 返済期間と返済回数 | 遅延損害金(年率) | 担保・連帯保証人 |
アコム | 1万円~300万円 | 実質年率7.7~18.0% | 貸金業者の借換え | 運転免許証 (交付を受けていない方は個人番号カードや健康保険証など) |
元利均等返済方式 | 借入日から最長13年7ヶ月 2~162回 |
20.0% | 不要 |
プロミス | 300万円まで (お客さま指定の契約額(極度額)の範囲内で当社が決定した額) |
6.3~17.8% (実質年率) |
他の貸金業者からの借入金返済に限定 | 本人確認書類 収入証明書類 |
元利定額返済方式 | 最終借入後最長10年 1回~120回 |
20.0% (実質年率) |
不要 |
アイフル | 1万円~800万円 | 3.0~17.5% | 当社及び他社借入金の借換え | 原則として、他社借入条件等の確認ができる書類 本人確認書類 源泉徴収票等収入を証明する書類 |
元利定額返済方式 | 最長10年 (120回) |
20.0% (実質年率) |
担保:不要 連帯保証人:不要 |
まとめ
おまとめローンの存在を知っている方は、中々少なかったと思います。
『こんな便利な方法があるなら、今すぐおまとめローンを利用したい!』
と考えた方も多いかもしれません。
ただ、もちろんメリットもあればデメリットもあるのがおまとめローンです。
多重債務に苦しんでいるからといって、安易におまとめローンを利用するのではなく、債務整理なども含めてきちんと比較検討していくことが重要です。